「好きなことを仕事にしたい」と考える人は少なくありません。しかし料理が好きな人が必ず飲食店経営に向いているとは限らないように、好きな仕事と向いている仕事は必ずしも同じではありません。
車が好きな人の場合、「車を見ることが好き」という気持ちと「整備作業を毎日続けることが得意」という能力は別です。パソコンが好きな人も、「操作するのが好き」という気持ちと「細かい仕様を詰めながら粘り強く実装作業を続けられる」という能力は別のものです。好きという気持ちは仕事選びの重要な要素ですが、それだけで適性を判断しないことが大切です。
好きなことは興味や関心が向く分野、得意なことは努力している感覚が少なくても成果につながりやすい行動(本人は普通だと思っていても周囲から評価される能力が隠れている場合があります)、価値を感じることは「何のために働くのか」という価値観です。この3つが重なる部分を探すことで、自分に合う仕事の方向性が見えやすくなります。
アパレル販売員として、服が好き・人と接することも好きで選んだ仕事。しかし苦手だったのは接客そのものではなく、売上目標を追い続ける環境・スタッフ間の競争・不規則な勤務時間でした。一方でお客様の相談に乗ること・商品の特徴を説明すること・新人スタッフへ教えることは得意だったため、商品企画やバイヤー職など、商品を選定・提案する仕事も選択肢として考えるようになりました。
経理の仕事は「数字を見るのが好き」という人だけが向いているわけではありません。正確に確認することが得意、ルールに沿って進めることが苦ではない人も適性を発揮できます。製造業の品質管理も、問題の原因を探ることが好き・細かな違いに気づける人に向いている可能性があります。「好きではないから向いていない」と決めつけず、自分の行動特性を見ることが大切です。
プレスリリースやSNS発信にやりがいを感じて広報職を選んだBさん。実際に評価されていたのは、経営陣と現場の意見をすり合わせる調整役、複数部署からの情報を整理してまとめる役割、急な依頼にも落ち着いて対応する姿勢でした。「文章を書くのが好きか」だけでなく「日々の業務のどの部分で力を発揮できているか」を見ることで、企画職や事業推進系の仕事も選択肢に入るようになりました。
好きなことを仕事にすることには大きな魅力がありますが、趣味と仕事では求められるものが違います。①好きな作業と嫌いな作業を分ける②継続して取り組めるか考える③仕事として必要な能力を確認する(動画制作なら撮影技術だけでなく企画力・編集能力・クライアント対応も必要)。
新しい企画を考えることに憧れて入社したCさんが実際にやりがいを感じていたのは、当日のスケジュール調整・出演者やスタッフ間の連絡役・トラブル発生時の即時対応でした。「企画を考えること」への憧れと「現場を回すこと」への適性は別だったと気づき、制作進行やプロジェクト管理系の仕事も視野に入れるようになりました。
好きな仕事が必ず向いているとは限らず、逆に最初は興味がなかった仕事でも自分の強みを活かせることで適職になる場合があります。職種名やイメージだけで判断せず、「その仕事の中で自分はどんな力を発揮できるのか」を考えることが重要です。